Termination without atrial captureについて解説します。

今回の記事ではTermination without atrial captureについて解説します。

Termination without atrial captureのポイントは以下のとおりです。

【現象】

SVT中に心室期外刺激を行い、心房を捕捉せずに頻拍を停止させること。


【本所見を得られた場合の鑑別診断上の意義】

心房頻拍(AT)を強く否定する所見。

His不応期に心室期外刺激を行いTermination without atrial captureが得られた場合にはAVNRTも否定的となる。

こちらの所見について解説していきます。

Termination without atrial captureという現象の解説

例として、このようなsequenceの頻拍がEPS中に誘発されたと仮定します。

Cycle Length:400msec
②HVA sequence
③EAAS(心房最早期興奮部位)はCS proximal

こちらの頻拍中に心室期外刺激を行ったところ頻拍が停止しました。

こちらは心房を捕捉せず頻拍が停止しています。

今回の所見のように「SVT中に心室期外刺激を行い、心房を捕捉せずに頻拍を停止させること」「Termination without atrial capture」といいます。

さらに「His不応期の心室期外刺激で心房を捕捉せずに頻拍を停止させること」もあります。

後述しますが、こちらはより診断的価値が高いです。

Termination without atrial captureの鑑別診断上の意義

この現象の重要な点として

頻拍の機序として心房頻拍(AT)が否定的となる所見である

という点が挙げられます。

SVTを鑑別する際は大きく①心房頻拍(AT) ②ORT ③AVNRTを鑑別する必要があります(1)

今回の所見はpacingによって心室は捕捉されている(=心室のERPではない)ものの心房が捕捉されなかったため、次のシナリオが考えられます。

①AT 

→ATは心房のみで回路が完結している。今回の心室期外刺激で心房を捕捉していないということは、心房の回路にpacingが影響を与えていない。にもかかわらず頻拍が停止するということは、pacingとは無関係に偶然ATが自然停止したということを意味するため、可能性は低い。

②ORT

→VA伝導(Kentなど)の不応期にぶつかって頻拍が停止させた可能性がある。

③AVNRT

→Hisを逆行性に伝導し、AVNRTの回路(fast pathwayやslow pathway)に干渉(collisionや不応期など)して頻拍を停止させた可能性がある。

この中でORTとAVNRTは説明できますが、ATはpacingのタイミングで偶然自然停止した以外の機序が考えづらいため、可能性は低いというわけです。

そのため再現性をもってこの所見が得られた場合には、ATは否定的と考えて良いということになります。

さらに「His不応期の心室期外刺激でTermination without atrial capture」が起こった場合ですが、その場合はAVNRTも否定的となります。なぜかというとHisが不応期であり逆行性に上がることができないため、AVNRTの回路に干渉できないためです。

そのため「His不応期の心室期外刺激でTermination without atrial capture」が起こった場合はAVNRTも否定的となり、ORTが強く示唆される所見となります。

Termination without atrial captureの関連論文

Termination without atrial captureに関連するcase reportも読んでみました(2)

よろしければご参照下さい。

ただTermination without atrial captureのもととなる原著論文を探すことができなかったため、もし知ってる方がいらっしゃいましたら教えて下さい(小声)

まとめ

今回の記事ではTermination without atrial captureについて解説しました。

【現象】

SVT中に心室期外刺激を行い、心房を捕捉せずに頻拍を停止させること。


【本所見を得られた場合の鑑別診断上の意義】

心房頻拍(AT)を強く否定する所見。

His不応期に心室期外刺激を行いTermination without atrial captureが得られた場合にはAVNRTも否定的となる。

みなさんの理解のお役にたてましたら幸いです。

Reference

(1)Nagashima K, Michaud GF, Ho RT, Okumura Y.
SVT quest: The adventure diagnosing narrow QRS tachycardia. J Arrhythm. 2024 Jul 11;40(4):767-785.

(2)Kaneko Y, Nakajima T, Irie T, Ota M, Kato T, Iijima T, Tamura M, Kobayashi H, Kurabayashi M.
Differential diagnosis of supraventricular tachycardia with ventriculoatrial dissociation during ventricular overdrive pacing. Pacing Clin Electrophysiol. 2011 Aug;34(8):1028-30.

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