この記事では
RV entrainment pacingでVAAV responseが得られた際に、ΔAAを測定する際の電位の選び方
についてまとめていきたいと思います。
私が実際にEPS中にラボの前でペーシングをしたり測定したりするようになって思った事は
「ラボに表示される電位の数、多すぎない??」
というものでした。
ΔAAを測定するとATとAVNRTの鑑別に役立つのは聞いたことがあるけれど、どこの電位を測ればよいのかは正直よくわからない

いっつも悩んでますね(断言)
ということでこの記事では「ΔAAを測定する時の電位はどの電位を選択すればよいのか」ということについて書き記しておくことにしました。
ΔAAとは
ΔAAは
RV entrainment pacing後にVAAV responseが得られた時にATとAVNRTのdouble atrial responseを鑑別するため1), 2)
に測定します。
例えばSVTに対してRV entrainment pacingを行った際、以下の電位が得られたとします。

こちらはいわゆるVAAV responseですね。

こちらはATを示唆する所見ではありますが、Fast-slow AVNRTではdouble atrial responseを認めることがあるためこれだけでは鑑別することは難しいとされています。2)
その鑑別のために測定するのがΔAAです。このΔAAは以下の式で測定されます。
ΔAA = TCL(Tachycardia Cycle Length) – (A1-A2 interval)
この数値が
26msecより大きければAVNRT, -80msecより小さければATの診断
と報告されています。1), 2)
この中でTCLは測定箇所で悩まないのですが「A1-A2 interval」はいつも悩むんですよね。なぜかというと、電位がたくさんありすぎるからです。


各部位ごとに電極の数は一つにすることを提案します(真顔)
原著論文を確認してみると…

ということで原著論文にあたってみました。
すると以下の文章が確認できました。
“Regardless of the type of tachycardia, we measured the A1-A2 interval of all V-A-A-V responses observed during the electrophysiologic study. The measurements were made at the site of earliest A2 activation.“
→Pacing Clin Electrophysiol. 2022 Jul;45(7):839-852.より引用
つまり原著によると
A1-A2 intervalはA2の再早期の電極で測定する
ということです。


ちなみに私は以前A1の再早期の電極で測定していたことがありました(懺悔)
まとめ
ということで今回の記事のまとめはこちらです。
・ΔAAはRV entrainment pacing後にVAAV responseが得られた際にATとF-S AVNRTと鑑別するために測定する
・TCLは測定に困ることはないが、A1-A2 intervalはどこを測定すれば良いのかわからなくなっていた。
・A1-A2 intervalはA2の再早期の電極で測定するのが原著論文どおりの測り方。
どの電極で測定すればいいのか、という悩みは私自身ラボ前に座るといつも悩むポイントですので、これからも学んだ内容を紹介していこうと思います。
Reference
(1)Nagashima K, Michaud GF, Ho RT, Okumura Y.
SVT quest: The adventure diagnosing narrow QRS tachycardia. J Arrhythm. 2024 Jul 11;40(4):767-785.
(2)Kaneko Y, Nakajima T, Tamura S, Nagashima K, Kobari T, Hasegawa H, Ishii H.
Discrimination of atypical atrioventricular nodal reentrant tachycardia from atrial tachycardia by the V-A-A-V response. Pacing Clin Electrophysiol. 2022 Jul;45(7):839-852.