頻拍中に心房期外刺激のpacingがcaptureしているかどうか判断するには何を意識すればよいのか

この記事では

頻拍中に心房期外刺激のpacingが心筋がcaptureしているかどうか判断するにはどこを見ればいいのか?

という疑問に関して、勉強したことをまとめていきます。

EPSの手順においては頻拍中にいろいろなペーシングを入れて頻拍の機序を特定していくわけですが、中でも悩ましかったのが「心房期外刺激」です。

たくゆきじ
たくゆきじ

いや、心房期外刺激以外も全部悩んでるんですけどね(小声)

何に悩むかというと

心房期外刺激によるpacingが本当に心房筋をcaptureしているのか

が分かりにくいことです。

その悩みについて、私が学んだことをここで共有したいと思います。

心室期外刺激、心房連続刺激、心室連続刺激との違い

頻拍中のペーシングには心房期外刺激、心室期外刺激、心房連続刺激、心室連続刺激があります。

この中で心室期外刺激、心房連続刺激、心室連続刺激はcaptureされているかどうかまだわかりやすいんですよね。

心室期外刺激
→pacing後にwide QRSが出現すれば「心室がcaptureされている」と判断できます。

心房連続刺激・心室連続刺激
→pacingがきちんとcaptureしていれば、pacing cycle length(PCL)でしっかりと乗っている(興奮がペーシングの周期に従っている)ことを確認します。

では、なぜ心房期外刺激は分かりにくいのか?

それは心房期外刺激の場合はcaptureしていても、12誘導心電図で形が大きく変化するわけではなく、連続刺激とは違いPCLから判断することもできません。

しかしながら心房期外刺激による所見はATの回路の特定や上室頻拍の鑑別に使われるため、心房がcaptureされているかどうかの判断は非常に重要です。1) – 3)

電位の中でどこを見て判断するのか

では実際どうやって判断するか?

心房期外刺激を入れた電極では、pacingにより電位がジャミジャミ(pacing artifact)してしまい、captureされているのかどうかよく分からないですよね。

たくゆきじ
たくゆきじ

クソッ…アーチファクトの野郎…邪魔だなこいつ…

そのため「Pacingに使った電極ではなく近くの心房電極のA波が前に引っ張られているか」を確認すると良いでしょう。

たとえば、鑑別診断のためにCS 7-8から心房期外刺激を入れたとして、CS 7-8はpacing artifactで波形が見づらい場合でも、周辺の電位(例:CS 5-6やCS 3-4など)でA波が本来のタイミングより先に出現していることを確認することで「心房がキャプチャーされている」ことを判断します。

またpacingによって心房興奮の順序が変化するため、「A波のsequenceが変わること」も判断材料となります。

当然近くの電位だけではないA波も前に引っ張られていたり、sequenceが変化しうるわけですが、まずはpacing siteの近くの電位を見てCaptureしているかどうか判断するのが良いかと思います。

まとめ

今回の記事のまとめはこちらです。

・頻拍中の心房期外刺激ではそもそもpacingがcaptureしているかどうか判断するために何を意識すればよいのかよくわからなかった。

・pacingをした電位そのものはPacing artifactのせいでよく見えない。

・pacingの近くの電位を確認して「pacingに伴ってA波が出現するタイミングが前にずれているか」「A波のシークエンスが変化しているか」を見ることで、captureしているかどうかを判断する。

リアルタイムのスピード感で本当に心房をキャプチャーしているかどうかを判断するのは正直なかなか難しかったです。

というのもどこをみれば判断できるのかが意識できなかったからです。

たくゆきじ
たくゆきじ

どいつもこいつも同じような電位に見えてしまいますからね(真顔)

ただちゃんとcaptureされていないとそもそも診断のための土台に乗らないので、この判断はとても重要です。

この記事が私と同じように「心房期外刺激が乗っているかどうか自信が持てない」と悩んでいる方の参考になれば幸いです。

参考文献

(1)Nagashima K, Michaud GF, Ho RT, Okumura Y.
SVT quest: The adventure diagnosing narrow QRS tachycardia. J Arrhythm. 2024 Jul 11;40(4):767-785.

(2)Yuji Wakamatsu, Koichi Nagashima, Kazuki Iso, Kazumasa Sonoda, Ryuta Watanabe, Masaru Arai, Naoto Otsuka, Satoshi Hayashida, Seina Yagyu, Syu Hirata, Sayaka Kurokawa, Ohkubo Kimie, Toshiko Nakai, Yasuo Okumura.
Resetting of atrial tachycardia by a scanned extrastimulus at a downstream site on a multielectrode catheter: a simple diagnostic maneuver for locating the macroreentrant atrial tachycardia circuit J Interv Card Electrophysiol. 2022 Jan;63(1):39-47.

(3)Osamu Inaba, Yukihiro Inamura, Takamitsu Takagi, Shin Meguro, Kentaro Nakata, Toshiki Michishita, Yuhei Isonaga, Toshikazu Kono, Shinichi Tachibana, Takashi Ikenouchi, Hiroaki Ohya, Kazuya Murata, Tomomasa Takamiya, Akira Sato, Tetsuo Sasano.
A Single Atrial Extrastimulation Resetting His Bundle During Supraventricular Tachycardia to Differentiate Atrial Tachycardia. JACC Clin Electrophysiol. 2024 Jun;10(6):1120-1131.

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